槍ヶ岳(やりがたけ)|天を貫く日本を代表する名峰「槍ヶ岳」

槍ヶ岳(やりがたけ)の基本情報

山域:北アルプス南部

標高:3,180m

適期:7月下旬〜10月上旬

日本で5番目に高い山であり、登山を志す人なら一度は目指したくなる名峰「槍ヶ岳」。その鋭く尖った山容から「日本のマッターホルン」とも称され、北アルプスを代表する人気の山です。

槍ヶ岳登頂には基本的に宿泊が必要ですが、上高地から槍沢を経由するルートは距離が長いものの、登山中級者であれば挑戦可能なコース。しっかりと経験を積み、適切なシーズンを選べば、槍ヶ岳の頂に立つという目標を達成することができます。美しい稜線と圧巻の景色が広がる槍ヶ岳。万全の準備を整え、憧れの頂へチャレンジしてみましょう。

槍ヶ岳の魅力

槍ヶ岳は、長野県松本市・大町市、岐阜県高山市にまたがる標高3,180mの名峰です。北アルプス南部(飛騨山脈)に位置し、日本百名山、新・日本百名山、花の百名山にも選ばれています。周辺には「燕岳」「双六岳」「大天井岳」などがあり、これらを結ぶ縦走コースも人気です。

鋭く尖った山容から「槍(やり)」の愛称で親しまれる槍ヶ岳ですが、その頂に初めて立ったのは江戸時代後期の1828年。初登頂者とされるのは、中田又重郎と山岳修行僧の播隆上人(ばんりゅうしょうにん)です。播隆上人は、より多くの人が安全に登れるよう岩壁に鎖を設置するなど尽力し、その功績を称え、JR松本駅には彼のブロンズ像が建てられています。

槍ヶ岳の開山後、1878年には日本のアルプスの命名者とされるウィリアム・ゴーランドが外国人として初登頂。さらに1892年には“日本近代登山の父”と呼ばれるウォルター・ウェストンも登りました。現在、頂上付近には鎖や梯子が整備され、一般登山者も安全に登頂できるようになっています。

槍ヶ岳の背景を知ることで、登る際に歴史の重みを感じられるはずです。さらに深く知りたい方には、山岳修行僧・播隆上人の生き様を描いた新田次郎氏の小説『槍ヶ岳開山』がおすすめ。フィクションではありますが、史実を交えた壮大な物語として読み応えのある一冊です。

槍ヶ岳からの景色

槍ヶ岳山頂

鋭くそびえ立つ槍ヶ岳の頂上からは、常念岳、大天井岳、穂高連峰、さらには南アルプスまで、日本アルプスの壮大な景色を一望できます。苦労してたどり着いたからこそ、槍ヶ岳登頂の達成感とともに味わうその景色は、まさに忘れられない瞬間となるでしょう。

しかし、頂上へ至る道は険しく、急な岩場や梯子を登るため、高度感がかなりあります。自分の限界を感じたら無理をせず、槍ヶ岳山荘周辺からの景色を楽しむのも一つの選択です。山頂まで行かなくても、槍ヶ岳ならではの絶景とその魅力を十分に堪能できます。

槍ヶ岳への主要コース

槍ヶ岳へ向かうルートはいくつかありますが、ここでは代表的な「上高地~槍沢コース」と「表銀座コース」の2つをご紹介します。

槍ヶ岳への道のりは長く、体力が重要となります。健脚で自信がある方を除き、いずれのコースも2泊以上の登山計画を立てるのがおすすめです。初めて槍ヶ岳に挑戦する方は、比較的歩きやすく危険箇所の少ない「上高地~槍沢コース」から始めるのが良いでしょう。

上高地~槍沢コース(2泊3日)

【出発地】 上高地(標高1,500m)

【標高差】 1,680m

【歩行距離】 約40km

【歩行時間】 約18.5時間(休憩含まず)

【登山レベル】 中級者向け(山のグレーディング 8C)

【トイレ】 登山コースの各山小屋にあり

【水場】 上高地~横尾山荘までは自動販売機あり/槍沢ロッヂ・槍ヶ岳山荘に水場あり

コース詳細

▼1日目

上高地バスターミナル → 明神館 → 徳沢ロッヂ → 新村橋 → 横尾山荘 → 槍沢ロッヂ

▼2日目

槍沢ロッヂ → 天狗原分岐 → 殺生ヒュッテ → 槍ヶ岳山荘 → 槍ヶ岳 → 槍ヶ岳山荘 → 殺生ヒュッテ → 天狗原分岐 → 槍沢ロッヂ

▼3日目

槍沢ロッヂ → 横尾山荘 → 新村橋 → 徳沢ロッヂ → 明神館 → 上高地バスターミナル

特徴・ポイント

このコースは槍ヶ岳を目指す登山初心者向けのコースとして、多くの登山者に利用されています。上高地から槍ヶ岳山荘までは比較的なだらかな道が続き、危険箇所もほとんどありません。

上高地と槍ヶ岳の中間地点に位置する槍沢ロッヂは、綺麗な施設に加え、お風呂もあるため人気の宿泊地です。1泊目にここで宿泊し、2泊目も同じく槍沢ロッヂに泊まれば、帰りの行程が楽になります。ただし、槍ヶ岳の景色をより満喫したい場合は、殺生ヒュッテやヒュッテ大槍に宿泊するのも良いでしょう。ただし、この場合は下山時の負担が増すため、体力と相談しながら決めることをおすすめします。

表銀座コース(2泊3日)

【出発地】 中房温泉(標高1,450m)

【標高差】 約1,730m

【歩行距離】 約37km(下山は上高地)

【歩行時間】 約22.5時間(休憩含まず)

【登山レベル】 中級者向け(山のグレーディング 9C)

【トイレ】 登山コースの各山小屋にあり

【水場】 登山コースの各山小屋にあり

コース詳細

▼1日目

中房・燕岳登山口 → 第2ベンチ → 合戦小屋 → 燕山荘 → 大下りの頭 → 切通岩 → 大天井ヒュッテ

▼2日目

大天井ヒュッテ → ヒュッテ西岳 → 水俣乗越 → ヒュッテ大槍 → 槍ヶ岳山荘 → 槍ヶ岳 → 槍ヶ岳山荘 → ヒュッテ大槍

▼3日目

ヒュッテ大槍 → 殺生ヒュッテ → 天狗原分岐 → 水俣乗越分岐 → 槍沢ロッヂ → 横尾 → 徳沢 → 上高地バスターミナル

特徴・ポイント

「表銀座コース」は、中房温泉・燕岳登山口からスタートし、燕岳、大天井岳、赤岩岳、西岳を経て槍ヶ岳へと至る北アルプス屈指の縦走コースです。「表銀座縦走コース」や「アルプス銀座」とも呼ばれ、多くの登山者で賑わうことから、この名称がつけられました。

燕岳を登頂した後、稜線を歩きながら槍ヶ岳を目指すこのコースは、まるで天空を歩いているかのような非日常的な絶景が魅力です。槍ヶ岳までの縦走路は比較的歩きやすいものの、鎖場・梯子・岩登り・ガレ場などの難所もあるため、慎重に進む必要があります。

1泊目の宿泊地としては、大天井ヒュッテや大天荘が選ばれることが多く、2泊目は槍ヶ岳山荘やヒュッテ大槍がおすすめです。下山ルートは、上高地へ向かうのが一般的ですが、中房温泉へ戻る往復コースも選択可能です。

注意点

表銀座コースは槍ヶ岳へ向かうコースのなかでも特に景観が素晴らしく、歩いていて楽しいルートですが、歩行距離が長いため体力が必要です。鎖場や梯子が点在するため、しっかりと登山経験を積んでから挑戦するのが望ましいでしょう。

初めての方は決して単独で行かず、登山経験が豊富な方と同行するようにしましょう。計画を立てる際は、天候や体力を考慮し、無理のない登山を心がけてください。

槍ヶ岳に佇む歴史深い山小屋「槍ヶ岳山荘」

槍ヶ岳山荘

槍ヶ岳山荘は、槍ヶ岳の頂上直下に建つ歴史ある山小屋で、大正15年(1926年)創業。北アルプスを代表する山小屋のひとつとして、多くの登山者に利用されています。

小屋からは360度の絶景が広がり、穂高連峰、立山連峰、常念岳、笠ヶ岳などの北アルプスの名峰に加え、中央アルプス、南アルプス、富士山まで見渡せることもあります。満天の星空や日の出・日の入りの美しさも魅力です。

また、名物の「焼きたてパン」は7月後半~9月中旬限定で販売され、日本で最も標高の高いパン屋ともいわれています。登山の疲れを癒やす香ばしい味わいは格別。槍ヶ岳の絶景を眺めながら、ここでしか味わえない特別なひとときを楽しんでみてください。

External Link Icon槍ヶ岳山荘 | 山小屋のご案内

槍ヶ岳(やりがたけ)で見られる花や植物

槍ヶ岳は「花の百名山」に選ばれており、四季折々の高山植物が楽しめる山です。春(4~6月)には、白く可憐なオオカメノキの花が咲き、ムラサキヤシオツツジの鮮やかな紫色が登山道を彩ります。

夏(7~8月)になると、ハクサンフウロやシナノキンバイ、タカネシオガマといった色とりどりの花々が咲き誇り、槍沢周辺ではお花畑が広がります。標高の高い場所でも見られるこれらの高山植物は、北アルプスの雄大な景色と相まって、登山者の目を楽しませてくれます。

秋(9~11月)には、青紫のオオヤマノリンドウや、黄金色のミヤマアキノキリンソウ(コガネギク)が、紅葉とともに山の景色に深みを加えます。厳しい自然環境の中でたくましく咲く高山植物の姿は、山の魅力をさらに引き立ててくれるでしょう。

槍ヶ岳を訪れた際は、雄大な景観だけでなく、足元に広がる可憐な花々にも目を向け、四季折々の表情を楽しんでみてください。

槍ヶ岳登山時の注意

槍ヶ岳は魅力的な山ですが、安全に楽しむためにはいくつかの注意点を守る必要があります。以下の注意点を参考に、楽しく安全な登山を心がけましょう。

① 自身の体力や技術に合わせた登山計画を立てる

登山計画は自身の体力や技術に合わせて立てることが重要です。無理のないスケジュールで計画し、途中での休憩や体力の消耗を考慮して進むことを心がけましょう。

② 地図とコンパスの携行

登山する際は必ず地図を持っていきましょう。コンパスも持参すると、万が一迷った際にも位置を確認しやすくなります。地図アプリも便利ですが、バッテリー切れに備えて紙の地図も用意しておくと安心です。

③ 登山基本装備の準備

山歩きの基本3大装備「登山靴」「ザック」「レインウェア」を準備して登山に挑みましょう。行程や季節に応じた装備や道具を準備することが重要です。また、防寒具や日焼け止め、帽子、手袋も忘れずに持参しましょう。

④ 登山届の提出

登山前には必ず登山届を提出しましょう。万が一の際に捜索がスムーズに行われるためです。オンラインでの提出が可能な地域も多いので、事前に確認しておくと良いでしょう。

⑤ 山岳保険の加入

登山中の事故や怪我に備えて、山岳保険に加入しておくことをお勧めします。万が一の場合に備えて、保険の内容をしっかり確認しておきましょう。

⑥ 経験者との同行

登山に慣れていない方は、できるだけ経験者と行くようにしてください。経験者がいると、道中の安全確認やペース配分のアドバイスを受けることができます。

⑦ 危険を感じたら引き返す

天候が急変したり、体調が悪くなったりした場合は、無理をせずに引き返すことが大事です。安全第一を心がけ、無理な登山は避けましょう。

⑧ 冬や残雪期の登山

槍ヶ岳は冬や残雪期には厳しい条件になります。技術や装備が必要なため、初心者は避けた方が良いでしょう。無理な計画をせず、自分のレベルに合った時期に登山を計画しましょう。

⑨ 環境保護の意識

登山中は自然環境を保護する意識を持ちましょう。ゴミは必ず持ち帰り、登山道を外れて植物を踏まないように注意します。また、山の動植物に対しても配慮し、自然の美しさを保つよう心がけましょう。

槍ヶ岳の天気

登山をする上で天気は非常に重要です。平地が晴れていても山は天気が変わりやすく、特に夏は注意が必要です。事前に天気予報をチェックし、「tenki.jp登山天気アプリ」や「てんきとくらす」などの情報を参考にしましょう。天気の変化に対応できるよう、適切な装備を準備して安全な登山を心がけましょう。

External Link Icontenki.jp|槍ヶ岳の天気
External Link Iconてんきとくらす|槍ヶ岳の天気

槍ヶ岳のお立ち寄り温泉

登山やハイキングの後は、温泉に浸かって疲れを癒やしましょう。上高地周辺には、日帰り入浴が可能な温泉施設がいくつかあります。ここでは、アクセスしやすいおすすめの温泉をご紹介します。

さわんど温泉 梓湖畔の湯

さわんど温泉-梓湖畔の湯

上高地への玄関口、さわんどエリアにある温泉。北アルプスを眺めながら入れる露天風呂が魅力です。

【料金】 大人750円、小人380円

【営業時間】 10:00‐18:30(10月21日~)

【営業期間】 4月中旬~11月中旬 10:00~18:30(10月21日~) / 12月下旬~4月中旬 11:00~18:00

【設備】 内湯、露天風呂、休憩室

External Link Iconさわんど温泉 梓湖畔の湯

※料金や営業時間などの情報が古い場合がございます。直接ご確認くださいませ。

上高地アルペンホテル

上高地アルペンホテル

上高地で唯一、日帰り入浴ができるホテル。朝風呂も可能で、登山前後に立ち寄りやすいのが魅力です。

【料金】 大人600円

【営業時間】9:30~12:00(受付終了11:30)※予約の必要はありません。

【設備】 内湯、ロビー

External Link Icon上高地アルペンホテル

※料金や営業時間などの情報が古い場合がございます。直接ご確認くださいませ。

槍ヶ岳(やりがたけ)のグルメ

槍ヶ岳登山の達成感を味わった後は、上高地で美味しいグルメを堪能するのも楽しみのひとつ。疲れた体に嬉しいご当地グルメや名物スイーツを味わいながら、絶景を眺めてリラックスしましょう!

五千尺キッチン(旧河童食堂)

五千尺キッチン

河童橋前にある人気の食堂。河童の刻印が可愛らしい「かっぱコロッケ」が名物です。

【メニュー】 かっぱコロッケ(わさび味) ¥390

【電話】 0263-95-2111

【営業時間】 10:00~15:00頃

External Link Icon五千尺キッチン

※料金や営業時間などの情報が変更されている場合があります。最新情報は直接ご確認ください。

徳澤園 みちくさ食堂

徳澤園-みちくさ食堂

「氷壁の宿」として知られる徳澤園の食堂。登山やハイキングの途中に立ち寄るのにぴったりです。

【メニュー】 ソフトクリーム ¥400、野沢菜チャーハン ¥900

【電話】 0263-95-2508

【営業時間】 9:00~20:00

External Link Icon徳澤園 みちくさ食堂

※料金や営業時間などの情報が変更されている場合があります。最新情報は直接ご確認ください。

槍ヶ岳への登山装備は万全にして安全登山を!

槍ヶ岳は、その険しい地形と変わりやすい天候のため、しっかりとした登山装備が不可欠です。特に初心者や経験の浅い登山者は、万全の準備を整え、安全に登ることを最優先に考えましょう。

今回紹介したコース以外にも、槍ヶ岳から奥穂高岳へと縦走する上級者向けルートがあります。このルートは、日本アルプスを代表する縦走コースのひとつであり、槍ヶ岳の鋭い頂を越えた後、岩稜を進みながら奥穂高岳へと向かいます。高度な技術と経験が求められますが、その分、雄大な景色と大きな達成感を得られるでしょう。

いずれのコースを選んでも、厳しい自然環境と向き合うことになります。無理をせず、自分のレベルに合ったルートを選び、慎重な登山計画を立てることが何よりも大切です。安全第一で、槍ヶ岳の登山を楽しみましょう。

槍ヶ岳登山に役立つ本やアイテム

槍ヶ岳登山に欠かせない地図と、より楽しむための本を紹介します。

HIKESのSNSもチェックしよう!
>登山・山歩きに役立つウェアや道具が満載!

登山・山歩きに役立つウェアや道具が満載!

登山・山歩きに欠かせないウェアや道具を詳しく紹介しています。季節や天候に応じたウェアの選び方から、軽量で機能的な登山ギアまで、実際の使用経験に基づいた信頼性の高いアイテムを厳選してお届けします。

初心者から上級者まで、すべての山歩き愛好者に役立つ情報が満載です。

CTR IMG