仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)|南アルプスの女王「仙丈ヶ岳」花と雷鳥がお出迎え

仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)の基本情報

山域:南アルプス北部

標高:3,032m

適期:7月下旬〜10月上旬

南アルプスを代表する名峰のひとつ「仙丈ヶ岳」は、標高3,033m。なだらかで優雅な山容から「南アルプスの女王」とも呼ばれ、日本百名山や花の百名山にも選ばれている人気の山です。対をなすように「甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)」が「南アルプスの貴公子」や「男山」と称されています。

登山道はよく整備されており、北沢峠を起点とするルートが主流。登山中級者であれば日帰り登山も可能で、東京方面からのアクセスも比較的良好なため、南アルプス入門の山として親しまれています。

高山植物の宝庫としても知られ、夏にはお花畑が広がり、運が良ければ雷鳥に出会えることも。北沢峠をベースに、甲斐駒ヶ岳とセットで登るプランも人気があります。

仙丈ヶ岳の魅力

仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)は、長野県と山梨県南アルプス市にまたがる南アルプス(赤石山脈)の北部に位置する標高3,033mの山です。東京方面からのアクセスも良く、日帰り登山も可能なことから、南アルプス登山の“入口”として多くの登山者に親しまれています。

「南アルプスの女王」と呼ばれるゆえんは、その優美な山容にあります。丸みを帯びた穏やかな稜線や、3つの氷河地形「カール(小仙丈・藪沢・大仙丈沢)」が織りなす柔らかな風景は、どこか包み込まれるような印象を与え、力強い山々が連なる南アルプスの中でもひときわ親しみやすさを感じさせます。

登山道は整備されており、険しさよりもじっくりと高度を上げていくルートが中心。登山に慣れた方はもちろん、初めての3,000m級に挑戦したい方にもおすすめです。歩みを進めるごとに風景が移ろい、標高とともに空気や植物も変化していく感覚が、この山の魅力の一つです。

また仙丈ヶ岳は、高山植物と雷鳥の山としても知られています。7月から8月にかけてはコイワカガミイワギキョウなど、秋にはチシマギキョウやタカネナデシコが山肌を彩り、植物に詳しくなくても思わず立ち止まりたくなる美しさです。そして、運が良ければ国の特別天然記念物である雷鳥に出会えることも。静かに歩いていると、足元にふわりと現れるその姿は、多くの登山者の記憶に残る特別な瞬間となるでしょう。

登るたびに新しい表情を見せてくれる仙丈ヶ岳は、自然の奥深さと登山の楽しさを改めて教えてくれる存在です。標高3,000mを超える山でありながら、懐深く迎えてくれるこの山は、南アルプスの入門にも、静かに自然と向き合いたい登山者にもぴったりの一座です。

仙丈ヶ岳からの景色

仙丈ヶ岳の頂上に立つと、そこに広がるのはまさに「空と山の海」。標高3,000mを超える位置からは、視界をさえぎるもののない壮大なパノラマが広がります。

東には、どっしりと構える甲斐駒ヶ岳が間近に見え、その奥には八ヶ岳連峰富士山の姿も。南には鳳凰三山、北アルプスの名峰たちも視界に入り、まるで日本アルプスの精鋭たちが顔をそろえたような贅沢な展望です。

道中にも見どころは多く、小仙丈ヶ岳付近まで登ると、一気に展望が開け、稜線の先に続く頂きや、眼下の深い谷、遠くに連なる峰々が見渡せるようになります。

特に晴れた日の朝や夕方には、斜光が山肌を照らし、柔らかな陰影をまとった景色が一段と印象的です。

雲の動きや空の色によって表情を変える仙丈ヶ岳の風景は、ただの「絶景」では言い尽くせない奥行きを持っています。長い登りの末にたどり着いたその景色は、身体の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれる力を持っています。

仙丈ヶ岳への主要コース

仙丈ヶ岳への登山で最も一般的なのは、北沢峠からのルートです。アクセスのしやすさと景観の豊かさから、多くの登山者に親しまれています。日帰り登山も可能ですが、所要時間が長いため、事前の登山計画が必須です。

北沢峠~小仙丈ヶ岳~仙丈ヶ岳ピストン(定番コース)

  • 標高差:約1,050m
  • 歩行距離:約10.2km
  • 所要時間:登り 約4時間、下り 約3時間15分
  • グレーディング:3C(初~中級者向け)

登りは北沢峠から始まり、小仙丈ヶ岳を経て仙丈ヶ岳山頂を目指します。下山時は、仙丈小屋や馬の背ヒュッテ、藪沢小屋を通って北沢峠へ戻る周回ルートも可能です。

このルートは、三つのカール(小仙丈・藪沢・大仙丈)をまたぐダイナミックな道のり。特に小仙丈ヶ岳付近では、一気に展望が開けるため、南アルプスや八ヶ岳の絶景を堪能できます。


また、北沢峠周辺には「こもれび山荘」、山頂付近には「仙丈小屋」「馬の背ヒュッテ」もあり、1泊2日での登山も人気です。時間に縛られず、夕焼けや朝焼けをゆっくり楽しめるのは、泊まりならではの贅沢です。

仙丈ヶ岳で見られる花や植物

仙丈ヶ岳は「花の百名山」にも選ばれているように、高山植物の宝庫としても知られています。登山シーズンとなる夏から秋にかけて、山の斜面や沢沿いには多種多様な花々が咲き誇り、登山者の目を楽しませてくれます。

中でも注目すべきは、三つのカール(小仙丈・藪沢・大仙丈)に沿って広がる植生です。これらのカールには雪解け水が流れ込み、湿潤な環境が整っているため、花の密度が非常に高く、歩いていても自然と足が止まります。

季節ごとの主な花は以下の通りです。

  • 夏(7〜8月):イワギキョウ、コイワカガミ、チングルマ、ハクサンフウロ
  • 秋(9〜10月):タカネナデシコ、チシマギキョウ、ミヤマリンドウ

また、運が良ければ雷鳥(らいちょう)に出会えることも。この希少な鳥は、高山帯にしか生息しない国の特別天然記念物で、仙丈ヶ岳ではその目撃率が高いことでも知られています。中には雷鳥の親子を見かけたという登山者の記録もあり、登山の楽しみのひとつとなっています。

植物や鳥たちとの出会いは、厳しい登りの疲れを和らげ、自然の中を歩くことの豊かさを改めて感じさせてくれます。

仙丈ヶ岳へのアクセス

仙丈ヶ岳の登山口となる北沢峠へは、マイカーで直接行くことはできません。環境保全のためマイカー規制が敷かれており、アクセスは公共交通機関または乗合タクシーとバスを利用することになります。

アクセスの流れ(公共交通機関の場合)

  1. JR中央線・甲府駅まで電車で移動
  2. 甲府駅からバスで芦安駐車場へ(約1時間)
  3. 芦安から広河原行きのバスまたは乗合タクシーに乗車
  4. 広河原で下車し、北沢峠行きのバスに乗り換え

※バスは本数が限られており、始発に乗ることが日帰り登山の鍵になります。

アクセスの流れ(自家用車の場合)

  • 中央道・甲府昭和ICから約50分で芦安駐車場
  • 芦安から先は公共バスまたは乗合タクシーでアクセス

※芦安〜北沢峠間はシーズンごとに運行ダイヤが異なるため、事前に「南アルプスNET」や「芦安観光トラベルサービス」の最新情報をご確認ください。

仙丈ヶ岳登山時の注意点

仙丈ヶ岳は魅力的な山ですが、安全に楽しむためにはいくつかの注意点を守る必要があります。以下の注意点を参考に、楽しく安全な登山を心がけましょう。

① 自身の体力や技術に合わせた登山計画を立てる

登山計画は自身の体力や技術に合わせて立てることが重要です。無理のないスケジュールで計画し、途中での休憩や体力の消耗を考慮して進むことを心がけましょう。

② 地図とコンパスの携行

登山する際は必ず地図を持っていきましょう。コンパスも持参すると、万が一迷った際にも位置を確認しやすくなります。地図アプリも便利ですが、バッテリー切れに備えて紙の地図も用意しておくと安心です。

③ 登山基本装備の準備

山歩きの基本3大装備「登山靴」「ザック」「レインウェア」を準備して登山に挑みましょう。行程や季節に応じた装備や道具を準備することが重要です。また、防寒具や日焼け止め、帽子、手袋も忘れずに持参しましょう。

④ 登山届の提出

登山前には必ず登山届を提出しましょう。万が一の際に捜索がスムーズに行われるためです。オンラインでの提出が可能な地域も多いので、事前に確認しておくと良いでしょう。

⑤ 山岳保険の加入

登山中の事故や怪我に備えて、山岳保険に加入しておくことをお勧めします。万が一の場合に備えて、保険の内容をしっかり確認しておきましょう。

⑥ 経験者との同行

登山に慣れていない方は、できるだけ経験者と行くようにしてください。経験者がいると、道中の安全確認やペース配分のアドバイスを受けることができます。

⑦ 危険を感じたら引き返す

天候が急変したり、体調が悪くなったりした場合は、無理をせずに引き返すことが大事です。安全第一を心がけ、無理な登山は避けましょう。

⑧ 冬や残雪期の登山

槍ヶ岳は冬や残雪期には厳しい条件になります。技術や装備が必要なため、初心者は避けた方が良いでしょう。無理な計画をせず、自分のレベルに合った時期に登山を計画しましょう。

⑨ 環境保護の意識

登山中は自然環境を保護する意識を持ちましょう。ゴミは必ず持ち帰り、登山道を外れて植物を踏まないように注意します。また、山の動植物に対しても配慮し、自然の美しさを保つよう心がけましょう。

仙丈ヶ岳の天気

登山をする上で天気は非常に重要です。平地が晴れていても山は天気が変わりやすく、特に夏は注意が必要です。事前に天気予報をチェックし、「tenki.jp登山天気アプリ」や「てんきとくらす」などの情報を参考にしましょう。天気の変化に対応できるよう、適切な装備を準備して安全な登山を心がけましょう。

External Link Icontenki.jp|仙丈ヶ岳の天気
External Link Iconてんきとくらす|仙丈ヶ岳の天気

仙丈ヶ岳のお立ち寄り温泉

長い登山の余韻をゆっくり味わいたい。そんなときは、下山後に立ち寄れる温泉で汗を流して、心も身体も整えてから帰路につくのがおすすめです。

北沢峠からバスで下山した後、アクセスしやすく、日帰り入浴も可能な施設として人気なのがこちら。

仙流荘「仙人の湯」

仙流荘「仙人の湯」

登山客に親しまれている仙流荘の「仙人の湯」は、広々とした内湯と露天風呂、落ち着いた休憩スペースを備えた施設。澄んだ山の空気とお湯の温もりがじんわりと染み渡り、歩き疲れた身体をやさしく癒してくれます。

  • 【料金】大人(中学生以上) 800円 児童(小学生) 400円
  • 【営業時間】12時〜20時(受付終了は19時30分)
  • 【設備】内湯、露天風呂、休憩室
  • 【ホームページ】https://www.ina-city-kankou.co.jp/senryuso/
  • 【備考】シーズンや曜日により変動があるため、事前に公式情報をご確認ください。

仙丈ヶ岳のグルメ

下山後に少し足を伸ばせば、伊那市で地域ならではの味に出会えます。素朴で滋味深い料理や、地元で親しまれる銘酒など、登山の余韻をより深めてくれる立ち寄りスポットです。

伊那名物「ローメン」|うしお

ラーメンでも焼きそばでもない独特の一皿「ローメン」は、蒸し麺にマトンと野菜を加えた、どこか懐かしい味わい。登山後でも食べやすく、地元では定番のソウルフードです。「うしお」はその元祖とも言われる老舗で、昼夜問わず賑わっています。

  • 【メニュー】ローメン並セット ¥750
  • 【営業時間】11:30~13:00/17:00~21:30(L.O.21:00)
  • 【定休日】日曜日
  • 【ホームページ】うしお(食べログ)

仙丈ヶ岳登山に役立つ本やアイテム

仙丈ヶ岳登山に欠かせない地図と、より楽しむための本を紹介します。

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