雨の日の登山は中止にすべき?雨の日登山の危険性と雨対策

せっかく登山の計画を立てたのに、前日の天気予報は「雨」。もしくは「曇りのち雨」など、なんともはっきりしない予報。こんなとき、あなたなら登山をどう判断しますか?

「せっかくだし行くだけ行ってみよう」

「晴れてないなら無理して行きたくない」

「別の山に変えよう」

天気が不安定な場合、同行メンバーの意見も分かれがちで、リーダーの判断も難しくなりますよね。

今回は、雨の日登山に潜むリスクや、行く・行かないの判断基準、事前に確認すべきポイントについて解説します。安全な登山のために、ぜひ参考にしてみてください。

雨の日登山が危険な理由

雨の日登山が危険な理由

「山の天気は変わりやすい」とよく言われますが、これは事実です。登山口では晴れていても、標高が上がるにつれて天候が急変し、頂上に近づく頃には雨に見舞われるというのは、登山ではよくあることです。

「景色が見えない」「足元が滑りやすい」といったイメージは誰でも持つと思いますが、それ以上に雨の日登山には深刻な危険が潜んでいます。遭難や重大な事故に発展する可能性もあるため、軽視は禁物です。

ここからは、雨の日に登山をする際に考えておくべき具体的なリスクについて解説していきます。

体を濡らすと低体温症になる恐れがある

「多少の雨なら大丈夫」と油断していると、突然の豪雨に打たれて一気にびしょ濡れになってしまうことがあります。雨具があっても、想定以上の雨量に対応しきれず、ウェアの内側まで浸水してしまうケースも。

実際、筆者も涸沢カールに向かう途中で突然の土砂降りに遭い、全身がずぶ濡れに。ゴアテックスの雨具とザックカバーでしっかり備えていたにもかかわらず、雨が染み込んでしまいました。

そのときはすぐにテントを設営して着替えたことで大事には至りませんでしたが、濡れた体は冷えやすく、体温低下による低体温症や体力消耗のリスクが高まります。どんなに準備していても、天候によっては想定を上回る状況があることを忘れてはいけません。

視界不良による遭難リスクが高くなる

雨が降ると、山全体が霧に包まれるような状況になることがあります。とくに高山では、一気にホワイトアウトのような状態になることも。これにより、進むべき道を見失ってしまうケースも多発します。

また、足元は濡れて滑りやすくなるため、転倒や滑落のリスクも大きくなります。とくに下山時は重心が後ろになりがちで、かえってバランスを崩しやすくなるため注意が必要です。登山に不慣れな方は、トレッキングポールなどのサポートアイテムを活用しましょう。

突然の鉄砲水!雨の日の沢沿いは危険

雨量が多い日は、沢や川の水位が急上昇します。山の地形では雨が一気に集まりやすく、場合によっては鉄砲水のように激流が押し寄せてくる危険性もあります。

晴れているときには安全に感じられたルートでも、雨天時にはまったく様子が変わります。特に夏の午後はゲリラ豪雨のリスクも高く、沢沿いのルートは絶対に無理をしない判断が求められます。

隠れた脱水症状に注意!水分補給を忘れずに

レインウェアを着て歩くと、特に夏場は想像以上に汗をかきます。雨で濡れている感覚の中で、つい水分補給を怠ってしまいがちですが、これは脱水症状の引き金になります。

ザックカバーをしていると飲み物を取り出すのが面倒になることもありますが、意識的に休憩を取り、水分や塩分を補給することが大切です。ポーチにボトルを入れたり、すぐ取り出せる場所に行動食を入れておくなど、ひと工夫しておくと安心です。

突然の雨に備える!晴れでも準備しておきたい雨装備

突然の雨に備える!晴れでも準備しておきたい雨装備

登山当日の天気予報が「晴れ」でも、雨対策は必ずしておきましょう。山の天気は本当に変わりやすく、「さっきまで快晴だったのに、急に雨が…」ということは珍しくありません。

雨具がない状態で突然の雨に降られてしまうと、想像以上に不快で危険です。「使わなかったから無駄だった」ではなく「使わなくて済んでよかった」と考えるのが登山の基本。特にレインウェアは、どんな山でも“お守り”としてザックに忍ばせておきましょう。

雨の日の登山は命に関わるケースもあります。だからこそ、雨対策装備は保険として信頼できる品質のものを選ぶのが鉄則です。きちんと手入れをすれば長く使えるので、投資の価値は十分にあります。

ここでは、登山における雨対策として準備しておきたい基本装備をご紹介します。

レインウェア(上下セット)

登山に行くなら、レインウェアは必携。雨を防ぐだけでなく、防風・防寒の役割も果たしてくれるため、どんな季節でも役立ちます。

選ぶときは、「透湿性(汗を外に逃す機能)」が高いものを選ぶのがポイント。蒸れにくく、快適な着用感を保てます。最近はデザインやカラーも豊富なので、視認性の高い明るめのカラーを選ぶと、安全性も上がります。

ザックカバー

雨からザックの中身を守るために欠かせないのがザックカバーです。行動中に雨が降ってきてしまうと、ザックの中に入れていた着替えや食料、電子機器、登山地図などが濡れてしまい、行動不能に近い状態になることもあります。とくに気温が低い山では、濡れた衣類は体温低下にもつながり、非常に危険です。

ザックカバーは、雨を弾く撥水素材で作られており、ザック全体を覆うことで中身を守ってくれます。最近のザックは、カバーが最初から内蔵されているタイプもありますが、付属していない場合は自分で用意する必要があります。選ぶ際には、ザックの容量(30L、40Lなど)に合ったサイズを確認し、風に飛ばされないようにフィット感のあるものを選ぶのがポイントです。

また、カバーを被せていると小物が取り出しづらくなるので、必要なものは事前にポケットやアクセスしやすい位置に収納しておくなどの工夫も大切です。雨が降っていなくても、天気が不安定な日は早めに装着しておくと安心です。

インナーバッグ(スタッフサック)

実はザックカバーだけでは、完全に荷物を守りきることができない場合があります。特に長時間にわたる強い雨や、風で横から吹き付ける雨の中では、ザックの縫い目やファスナーの隙間から水が浸入し、内部が濡れてしまうことも珍しくありません。

そのため、ザックの中身はアイテムごとに小分けにしてインナーバッグ(スタッフサック)に入れるのが雨対策の基本です。衣類や電子機器、食料など、濡れて困るものはすべて防水性の高い素材のバッグに入れましょう。ジップ付きでしっかり密閉できるタイプや、ロールトップ式で水の侵入を防げる仕様のものが特におすすめです。インナーバッグを色分けしたり、用途別にラベルを付けると整理整頓にも役立ち、取り出す際にも迷いません。

雨よけ帽子・キャップ

小雨程度であれば、撥水性のある帽子やキャップで十分に対応可能です。レインウェアのフードと組み合わせて使えば、顔まわりの濡れを大幅に防ぐことができ、視界も確保しやすくなります。特に登山道では、濡れたメガネやフードのバサつきがストレスになることがあるため、帽子での補助が効果的です。

選ぶならゴアテックスなど防水透湿性に優れた素材のものがおすすめで、ツバが広めで水滴を弾きやすく、顔に雨がかかりにくい設計のものが登山者には人気です。また、夏場は蒸れが気になる季節なので、ベンチレーション付きで通気性のよいモデルを選べば快適に行動できます。帽子は軽量でコンパクトに収納できるので、晴天でも常に持参しておくと安心です。

明日の予報は雨…中止の判断や代替案は?

明日の予報は雨…中止の判断や代替案は?

登山を予定していても、天気が不安定だと迷うもの。特に降水確率が40〜50%といった“微妙な予報”の場合は、行くか中止か判断が分かれやすくなります。ここでは、雨の可能性がある日の判断基準や、天候に応じた代替案について紹介します。

降水確率40~50%以上なら中止の判断を

私の場合、前日や2日前の天気予報を見て、降水確率を基準に判断するようにしています。関東近郊の低山なら40%でも行けることがありますが、標高の高い山になると同じ40%でも雨が降る可能性はかなり高くなるため、そのあたりは山の場所や標高に応じて柔軟に判断します。

過去に運営していた登山コミュニティでも、少しでも雨の気配がある場合は「ほぼ中止」というのが基本方針でした。なぜなら、登山者の間でも「多少の雨なら問題ない」という人もいれば、「少しでも不安があるなら行きたくない」という人もいるからです。判断が割れてしまうと、かえって準備や段取りが複雑になることも。「迷うならやめる」というシンプルな基準を持っておくと、気持ちの整理もつきやすくなります。

他の山に行くなら、時間と距離を考慮して

どうしても山に行きたい場合は、天気の良いエリアに変更するという手もあります。ただしこの場合も、条件を明確にしておきましょう。

  • 歩行距離が短めであること
  • 標高があまり高くない山であること
  • いつでも引き返せるコースであること

といった条件を押さえることで、安全性を保ちつつ柔軟に対応できます。山に行くことにこだわらず、ハイキング感覚で楽しめる里山や、温泉・ご当地グルメを目的にした“ゆる登山”にシフトするのもおすすめです。

無理して行かないのも大切な判断

個人的には、「山は逃げない」という考え方が好きです。雨が降りそうなら無理して出かけず、潔く中止にしてしまう。予定が空いたなら、登山グッズの手入れをしたり、アウトドアショップをのぞいたり、自宅でのんびり過ごすのも立派な“山時間”だと思っています。

晴れの日に気持ちよく歩くためにも、リスクのある日はあえて登らないという選択肢を持っておくこと。それが登山を長く楽しむためのコツでもあります。

雨に慣れるための練習と楽しみ方

雨の日登山の魅力ってなんだろう?

雨の日の登山は「危ない」「面倒」と敬遠されがちですが、実は工夫次第で楽しめる一面もあります。突然の雨に備えるためにも、雨の日ならではの歩き方や装備に慣れておくことは大切です。ここでは、無理のない練習方法と、雨の日にしか見られない自然の魅力をご紹介します。

雨に慣れるための練習は難易度の低い山から

「雨の日は絶対に登山しない」と決めてしまうのも一つの考え方ですが、実はそれだけでは危険回避には不十分です。というのも、登山では突然の雨に遭遇することがよくあります。そのときの対処法や行動感覚を知っておくことは、安全登山のためにとても大切です。

雨の日は、レインウェアを着たり、ぬかるんだ道を歩いたりと、晴れた日とは違う条件になります。その「違い」を事前に経験しておくことで、いざというときの判断や行動に余裕が生まれます。

雨に慣れるには、あえて難易度の低い山を選んで練習してみるのがおすすめ。実際にレインウェアを着て歩いてみると、蒸し暑さや動きづらさ、フードをかぶったときの視界の狭さや音の聞こえづらさに気づくはずです。

練習に適しているのは、標高が低く、歩行距離も短いコース。無理に頂上を目指す必要はありません。雨の日登山の感覚を知ること自体が、貴重な経験です。また、大手登山用品店や登山スクールなどでは「雨の日登山講座」やガイド付き講習も開催されているので、初心者はこうした機会を活用するのも良い方法です。

雨の日登山の魅力ってなんだろう?

「雨=ネガティブ」と思いがちですが、実は雨の日ならではの魅力もあります。たとえば、植物がより美しく見えるという点。葉や花が雨に濡れることで色合いが深くなり、生命力に満ちた姿が際立ちます。

特に梅雨の季節、自然の世界では雨によって雪解けが進み、その下から一斉に高山植物が顔を出します。代表的な花の一つが「ミズバショウ」。6月頃、尾瀬では一面に咲くミズバショウを目当てに全国から多くのハイカーが訪れます。

雨の日登山は「登る楽しさ」よりも、「自然を観察する楽しさ」が際立つかもしれません。視線を足元に落として、小さな草花やしっとりと濡れた苔を眺める。それだけでも、十分に山の豊かさを味わうことができます。晴れの日とは違った角度から、山の魅力を再発見できるのも雨の日登山の醍醐味です。

雨の日は登山には「行かない」も選択肢

この記事を書きながら、ふと自分の初めての登山が雨の日だったことを思い出しました。といっても本格的な登山ではなく、軽めのハイキングコース。それでも雨と慣れない足取りに、当時はドキドキした記憶があります。その時の装備は今思えば不十分で、結果的に「ちゃんとした山装備って大事だな」と痛感するきっかけになりました。むしろ最初に気づけてよかったのかもしれません。

登山は自己責任とはいえ、事故は未然に防ぎたいもの。最終的には「行かない」判断もまた、大切な選択肢のひとつです。とくに雨の予報が出ている場合は、無理に決行せず、安全第一で判断することが何より重要です。しっかりと装備を整えて、リスクを想定した計画があるなら問題ありませんが、「ちょっと不安…」という気持ちがあるなら、その時点で中止する勇気も持ちましょう。

最後に、雨の日登山の楽しみ方として、東京都・御岳山のロックガーデンを歩いた動画をご紹介します。しっとりと濡れた植物たちの表情に癒されながら、雨の山の魅力も感じていただければ幸いです。

雨の日登山に役立つアイテム

 
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登山に傘?と思う方もいるかもしれませんが、私もこのモンベルのトレッキングアンブレラを使っています。レインウェアの中が蒸れて不快…というときにサッと広げられて本当に便利。風が強すぎる場面では出番がありませんが、それ以外ならかなり活躍します。個人的には「軽さ」と「すぐ使える」点が気に入っています。
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