和食や和紙など日本文化が世界で評価されていますが、手ぬぐいもその一つです。かつては古めかしい印象があった手ぬぐいですが、今ではおしゃれなデザインが増え、外国人観光客にも人気です。
実は、この手ぬぐいが登山やアウトドア活動においても欠かせないアイテムとなっています。今回は、手ぬぐいの隠れた性能と山小屋で手に入る限定商品の魅力についてご紹介します。
手ぬぐいの歴史とタオルとの違い
手ぬぐいは、日本の伝統的な布製品で、その多機能性とデザイン性から、現代の登山やアウトドア活動でも愛用されています。ここでは手ぬぐいの歴史とタオルとの違いを解説します。
江戸時代から愛用される手ぬぐい
手ぬぐいは奈良時代には既に存在していました。神社仏閣で清掃用に用いられていたのです。平安時代になると神事の際の装身具として、鎌倉、室町時代に入ると身分の高い人の体を拭く目的でも使われだしました。元来、布は貴重品なうえ、手ぬぐいとなる綿は中国からの輸入に頼っていたのでなかなか庶民には普及しなかったのです。
江戸時代になると国内でも綿花の栽培が盛んになり、一般の人にも手ぬぐいが手に入りやすくなります。手を拭くのに使われたり、被り物に利用されるなどぐっと身近なものに。意匠にも凝るようになって、“手ぬぐい合せ”と呼ばれる品評会なども開催されるように。また、折り紙のようにさまざまな形を造る、“折り手ぬぐい”も誕生しています。
手ぬぐいとタオルは何が違うの?
一気に急成長を遂げた手ぬぐい市場でしたが、明治時代には西欧諸国からタオルがもたらされ、その地位が脅かされることに。同じ綿製品ですが、織り方を変えるだけでふっくらと厚みがあり、吸水性にも優れたタオルに人々は魅了されていきます。
“アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引く”と言われたように、文明開化や第二次世界大戦終結以降の日本では欧米スタイルが支持を集め、和のものは見向きもされない傾向にありましたが、時代は変わりつつあるようです。
流行に敏感な若者を中心に和がカッコいいと注目され始め、SNSから発信された情報などにより海外にまで広がりを見せているのです。ラッピング材や祝儀袋など、思いもよらなかった斬新なアイディアによって脚光を浴びています。
登山やアウトドアに手ぬぐいが好まれる理由
手ぬぐいは現代の登山やアウトドア活動においても、その多機能性とデザイン性から多くの人に利用されています。ここでは、その隠れた機能性と使い方を紹介します。
コンパクトかつ軽量で速乾性高い万能アイテム
手ぬぐいにはタオルにない携行性の良さがあります。ふっくらした厚みがないため、かさばらず持ち運びが非常に便利です。例えば、タオルをリュックに詰めた場合、何枚も持てませんが、手ぬぐいなら小さく折りたためるため、多くの枚数を携行することができます。軽くて小さいため、山歩きや登山、キャンプといったアウトドアに最適です。
次に機能性についてです。山歩きや登山では汗をかきますが、手ぬぐいはその速乾性が魅力です。計画によっては1枚で十分な場合もありますが、数枚持ち歩いていれば汗で湿っていない、まっさらな手ぬぐいを使えてリフレッシュできます。転んだり、足場が悪くて地面に手をついたときなども、汚れを拭くものと汗を拭くものを分けて使えば快適です。手ぬぐいは洗えばすぐに乾くのも特徴です。
登山の手ぬぐいの使い方は用途に合わせて自由自在
ケガをしてしまったときにはガーゼや包帯の代わりになります。綿は化繊のようにすぐに燃えたりしないので、火で軽く炙れば滅菌処理も可能です。靴のソールがはがれてしまった、靴ひもが切れてしまったなどというときでも応急処置に使えます。タオルのように端の処理がされていないので裂いて加工することが容易なのです。加えて、綿は滑りにくいという特徴があります。林業従事者は昔、綿で布草履を作って履いていたそうです。
たまに山でも見かけますが、手ぬぐいはペットボトル・ホルダーとしても活用できます。持ち手を付けることもできるので、カラビナを使えばリュックにも下げられます。折り手ぬぐいの要領で鍋敷きや鍋つかみを作って活用することも。工夫次第で用途は無限に広がります。
登山での手ぬぐいの巻き方とメリット
手ぬぐいは登山やアウトドアでの多機能アイテムとして活用されることがわかりました。ここでは、具体的に手ぬぐいの巻き方とそのメリットを紹介します。
頭に巻いて帽子代わりに。お洒落としても楽しめる
手ぬぐいの活用用途は様々ですが、特に頭に巻くことで、その機能性を発揮します。例えば、ヘルメットや帽子の下に手ぬぐいを着けると、日焼け防止に役立ちます。頭全体をすっぽり包むのではなく、首の後ろを保護するように掛ければ、直射日光を遮り、夏の暑さを軽減することができます。
手ぬぐいを帽子やウェアとコーディネートすることで、おしゃれに楽しむこともできますし、お気に入りの帽子が汗で汚れるのを防ぐ効果も期待できます。
また、剣道では面の下に手ぬぐいを着けることで、汗が面を傷めないようにする目的があります。これと同じように、鉢巻のように額に巻けば、汗止めとしても効果的です。サッカー選手がカチューシャのような汗止めをしているのを見かけますが、これは大事な場面で汗が目に入るのを防ぐためです。
鉢巻をすることで頭が冴え、集中力が高まるとも言われています。安全な登山をする上でも有効ですね。
帽子代わりにする巻き方
①手ぬぐいを広げて三角形に折ります。
②三角形の底辺を額に当て、長い辺を後頭部に回します。
③両端を後頭部で交差させてから、前に持ってきて額の上で結びます。
首に巻くことで暑さ対策と汗の吸収に
手ぬぐいを首に巻くことで、首筋を伝う汗を効果的に吸収し、快適性を保つことができます。汗をかいたままにしていると、不快なだけでなく、体温が下がってしまうこともあります。汗が乾いて気化することで体温を下げてしまうからです。
暑い季節には、この原理を有効活用することも可能です。首の側面には動脈が流れているため、ここを冷やせば気化熱が体温を下げてくれます。保冷剤を手ぬぐいにくるんで首に巻くのもおすすめです。冬の時期には「三つの首」(首、手首、足首)を温めると良いと言われていますが、夏は逆に冷やすことが大切です。
首の巻き方
①手ぬぐいを広げて長方形に折ります。
②首の後ろに手ぬぐいを当て、両端を前に持ってきて結びます。
山小屋限定の手ぬぐいを購入して山歩きの思い出に
山小屋にはその山や山小屋ならではの限定手ぬぐいが販売されています。想いのある山に行った場合は、山歩きの思い出として購入するのもいいですね。ここでは、私が山小屋で購入した手ぬぐいをご紹介します。年季が入っているものもありますが、そこはご愛嬌ということで……。
初めて訪れた尾瀬の水芭蕉の手ぬぐい
これは初めて尾瀬を訪れたときに購入した手ぬぐいです。尾瀬の水芭蕉と聞くと一度はみてみたい場所ですね。山歩きを始める前は知らなかった尾瀬に来れたということで購入しました。手ぬぐいを購入したことも初めてという想いのある初めてづくしの手ぬぐいです。
憧れの涸沢カール、北アルプスの手ぬぐい
山歩きを初めてまもないころ、秋に絶対に涸沢カールに行こうと決めていました。その想いの強さがあったことから手ぬぐいを購入しました。山への想いが強いと購入するタイプなんです。
おしゃれでシンプルな赤岳鉱泉の手ぬぐい
この手ぬぐいはジャケ買いのように購入しました。赤岳鉱泉はWEBサイトもおしゃれにできており、山小屋自体も素敵な雰囲気があります。デザイン重視で買うのもいいですね。
ロマン感じる手ぬぐいをあなただけのコレクションに
手ぬぐいはその機能性とデザイン性の両方を楽しむことができる魅力的なアイテムです。歴史の深さにもロマンを感じる手ぬぐいは、ただの実用的な道具ではなく、文化や伝統の一部でもあります。
山小屋ごとにオリジナルの手ぬぐいは、山歩きの思い出として購入するだけでなく、コレクションする楽しみもあります。お気に入りの山や山小屋の手ぬぐいを集めることで、山歩きの記憶を鮮やかに蘇らせることができますね。
自分だけのお気に入りの手ぬぐいを見つけ、山歩きのお供にすることで、登山の楽しみ方がさらに広がるでしょう。100名山を目指すのも良いですが、100種類の手ぬぐいを集めるのはいかがでしょうか。
登山にちなんだ手ぬぐい
山小屋の手ぬぐいは直接足を運んで購入することに価値がありますが、安全登山としてのお守り代わりの手ぬぐいや富士山柄も魅力的ですね。ネットで購入できる手ぬぐいを紹介します。
HIKES編集長の里山トラベル
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