登山、トレッキング、ハイキング、その違いは?体力や経験に合わせた山歩きの楽しみ方

「登山」と一口に言っても、そのスタイルや目的はさまざまです。例えば、「アルプスの頂上を目指す本格的な登山」から「厳冬期の雪山に挑む登山」、「低山でのんびり楽しむ登山」、「地元の里山を歩くハイキング」など、多岐にわたります。話す人や団体によっても定義が異なることが多いですが、今回は「登山」「トレッキング」「ハイキング」の違いに焦点を当て、それぞれの特徴や楽しみ方について詳しくご紹介します。

登山とは?

登山とは、基本的には「山に登る」ことを指しますが、一般的には、自らの足で山の頂上を目指す活動を「登山」と呼びます。登山にはいくつかのスタイルがあり、大きく「一般登山(無雪期)」「積雪期の登山」「バリエーションルート登山」の3つに分けられます。それぞれのスタイルによって、必要な装備や技術が異なります。

一般登山(無雪期)

登山とは?

一般登山(無雪期)は、雪がない季節に山頂を目指すスタイルで、主に初夏から秋にかけての期間に楽しむことができます。無雪期の登山は比較的安全で、気軽に始められるため、初心者から経験者まで多くの人に親しまれています。

ガイドブックや登山雑誌で紹介されている標準的なコースを歩くことが多く、コースの難易度や体力に合わせて楽しみ方を選べるのも魅力です。楽しみ方としては主に「日帰り登山」「宿泊登山」「縦走登山」があります。

日帰り登山

日帰り登山は、最も手軽に楽しめるスタイルです。通常、往復で5〜7時間ほどのコースが一般的で、標高1,000〜2,000m程度の山を選ぶことが多いです。例えば、東京近郊の高尾山(599m)や関西の金剛山(1,125m)などは、初心者に人気の山です。

装備も軽量で済むため、トレッキングシューズ、レインウェア、小型のリュックサック(20〜30ℓ程度)などがあれば十分です。

初心者はこのスタイルから始め、徐々に山に慣れていくのがおすすめです。はじめは短いコースから始め、慣れてきたら徐々に距離や難易度を上げていくと良いでしょう。

宿泊登山

1泊以上の宿泊を伴う登山は、山の奥深さをより堪能できるスタイルです。例えば、北アルプスの燕岳(2,763m)や八ヶ岳の赤岳(2,899m)では、山小屋に宿泊しながら数日かけて山を歩くことで、日帰りでは味わえない豊かな自然体験が楽しめます。

宿泊登山には、次の日の着替え、食料、水などの装備が必要であり、通常は30〜40ℓ程度のザックが求められます。テント泊を選ぶ場合はさらに装備が増え、テント、寝袋(シュラフ)、マットなどのキャンプ用品も必要です。これらの荷物は重くなりがちなため、グループで登る場合は装備を分担して持ち合い、個々の負担を軽減することが大切です。

宿泊登山の大きな魅力は、日中の登山では味わえない特別な瞬間を体験できることです。夜は満天の星空を眺め、早朝には山頂でのご来光を見ることができます。また、山小屋では他の登山者と交流する機会も多く、貴重な情報交換や新たな仲間との出会いも楽しみの一つです。

縦走登山

縦走登山は、標高2,000〜3,000m級の山々を数日間かけて縦断するスタイルです。例えば、北アルプスの表銀座コース(燕岳〜槍ヶ岳)や、南アルプスの北岳から間ノ岳を経由して塩見岳に至るコースなどが人気です。

縦走登山の魅力は、森林限界を超えた高山帯での壮大な景色や、連続した山々を結ぶ雄大な稜線を歩くことです。しかし、岩場や鎖場、梯子などが多く、技術的な難易度が高い箇所もあるため、しっかりとした体力と登山技術が求められます。

また、天候が悪化した際には、高山の過酷な環境に対応できる防寒具や雨具、しっかりした登山靴が必要です。さらに、ルートファインディングの技術が重要であり、地図やコンパスを使いこなす能力も欠かせません。これらの準備をしっかりと整え、無理のない計画を立てることが、縦走登山を安全に楽しむための鍵となります。

積雪期の登山

積雪期の登山

積雪期の登山は、冬の雪山を楽しむスタイルで、無雪期の登山とは異なる技術や装備が必要です。雪山ならではの厳しい環境に対応するためには、アイゼンや冬用ブーツ、ピッケルなどの冬山専用装備が欠かせません。また、冬は多くの山小屋が閉鎖されるため、事前にしっかりと計画を立て、天候やコースの状況を十分に把握しておくことが大切です。天候の変化が急激なことも多いため、悪天候の兆しが見えたら早めに引き返す決断も必要です。

冬山登山で特に気をつけるべきは、安全面です。雪山は夏や秋の登山とは異なり、雪崩や滑落のリスクが高まります。毎年、こうした事故が起こることもあり、しっかりとした準備や訓練が欠かせません。登山講座を受けたり、経験豊富な登山者に教わったりして、必要な技術や判断力を磨いておくことが大事です。

とはいえ、冬山には厳しいだけでなく、その季節ならではの楽しさもあります。安全なルートを選べば、スノーシューで雪の中を歩くスノーハイクや、スキーやスノーボードで雪山を滑走するアクティビティも楽しめます。雪に包まれた静かな風景や美しい雪景色を楽しむのも、冬の登山の大きな魅力です。

バリエーションルート登山

バリエーションルート登山は、決まった登山道を外れて、自分でルートを選びながら楽しむ、冒険心をくすぐるスタイルです。例えば、川をさかのぼる「沢登り」では、流れに沿って歩いたり、岩を越えたり、滝を回り込んだりと、自然と一体になってダイナミックな体験が楽しめます。

また、岩場をロープで登る「クライミング」も人気で、スリル満点の挑戦ができます。こうした登山には、特別な装備と技術が必要で、ロープやハーネス、ヘルメットなどの安全装備に加え、ロープワークや救助技術などのスキルも求められます。

ただ、こうした技術や装備の使い方は普通の登山でも役立つことが多いので、覚えておくと安全に楽しむ幅が広がります。バリエーションルート登山に挑戦することで、自然の新たな一面を発見したり、これまでとは違った山の楽しみ方を体験できるかもしれません。

トレッキング(軽登山)

トレッキング(軽登山)

登山が山頂を目指すことを目的とするのに対し、トレッキングは、必ずしも高い山の頂上を目指さず、自然の中を歩くこと自体を楽しむスタイルです。時には山頂に到達することもありますが、無理せず、自分のペースで自然や風景を楽しむことが主な目的です。最近では、リラックスしながら自然を楽しみたい人や、体力に自信がない方に注目されています。

世界的な文化「ロングトレイル」

また、長距離を歩きながら自然をじっくり味わうロングトレイルも世界的に関心を集めています。アメリカでは「アパラチアン・トレイル(AT)」や「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)」が有名で、それぞれ全長約3,500km、4,200kmにもおよぶ大自然を縦断するトレイルです。特にアパラチアン・トレイルは、東部の山々を縦断し、年間を通して多くのハイカーが挑戦する、まさにアメリカの大自然を体感する道です。

ヨーロッパでは、スペインの「カミーノ・デ・サンティアゴ(サンティアゴ巡礼路)」が知られており、全長800km以上の巡礼路を歩き、歴史と文化を体験しながら、心身ともにリフレッシュする体験ができます。この巡礼路は、単なるトレッキングの枠を超え、精神的な旅としても多くの人に支持されています。

日本のロングトレイル

日本でも、近年ロングトレイルの人気が高まっており、自然と文化をじっくり楽しむスタイルが注目されています。日本の地形や気候に合わせたトレイルは、100km前後の距離が一般的で、数日から1週間程度で楽しむことができます。たとえば、北海道にある全長71.4kmの「十勝ロングトレイル」、信州にある全長80kmの「信越トレイル」、八ヶ岳を1周する全長200kmの「八ヶ岳山麓スーパートレイル」などがあり、どれも豊かな自然を満喫できます。

また、日本には「熊野古道」など、歴史的な背景を持つトレイルも多くあります。和歌山県を中心に広がる熊野古道は、世界遺産にも登録されており、自然の美しさと日本の古い文化や信仰の歴史を感じながら歩くことができます。

さらに最近のトレンドとして、UL(ウルトラライト)な軽量装備が若年層の間で人気を集めています。従来の重装備に比べて軽量かつコンパクトで、快適さと機能性を兼ね備えたギアが注目されています。軽量のバックパックやテント、簡易な調理器具などを使うことで、体力的な負担を軽減し、長距離のトレイルもより手軽に楽しむことができます。また、こうした装備は機能的でありながらスタイリッシュで、アウトドアファッションとしても人気です。

ロングトレイルの楽しみは、ただ歩くだけでなく、道中で秘湯と呼ばれる温泉に立ち寄ったり、地元のグルメを楽しんだりすることにもあります。四季折々の景色を感じながらのんびりと歩くことで、心身ともに癒される旅になること間違いありません。

ハイキング(里山歩き)

ハイキング(里山歩き)

ハイキングは、気軽に自然を楽しむためのアウトドア活動で、比較的距離が短く、ゆるやかな山や高原を歩くことを指します。山頂を目指すことが目的ではなく、歩きながらその土地の歴史や文化に触れたり、植物や野鳥を観察したり、季節の移り変わりを感じたりすることが主な楽しみです。

ハイキングは、体力に自信がない方や、初心者の方でも無理なく始められるため、近年では「ウォーキング+自然体験」として幅広い層に支持されています。

ハイキングの魅力の一つは、その手軽さです。特に都市からアクセスしやすい里山や高原コースは、多くの人に親しまれています。例えば、東京近郊の「御岳山のロックガーデン」は、四季折々の景色が楽しめるコースで、渓流や苔むした岩が続く中を歩きながら、自然の美しさを堪能できます。ハイキング初心者でも楽しめる整備された道が多く、家族連れやシニア層にも人気があります。

また、埼玉県飯能市にある「天覧山・多峯主山」も、気軽に歩けるハイキングコースとして注目されています。比較的短いコースでありながら、山頂からの展望も楽しめ、地元の文化や風景を感じながら散策できます。都心からのアクセスも良いため、休日のリフレッシュに最適なスポットです。

しかし、天候の移り変わりには注意しましょう。基本的な装備として、歩きやすいトレッキングシューズや、天候に対応できるレインウェア、軽食や飲み物、応急処置キットなどを持参することが大切です。特に、御岳山のような人気スポットでも、急な雨や足場の悪化に備えるため、最低限の準備はしっかりしておきましょう。

自分の登山スタイルに合わせて一歩ずつ山を楽しもう!

登山を始めたいと考えている方には、まずは気軽に始められるハイキングからスタートし、徐々に山に慣れていくことをおすすめします。登山装備を一度に揃えると費用がかさむため、まずはハイキングで必要な最低限の装備から揃え、次にトレッキング、さらに本格的な登山へと進む中で、少しずつ装備を増やしていくと良いでしょう。

本格的に登山の技術を身につけたい方は、山岳会に参加したり、登山講習を受けたりするのも良い方法です。一人での登山に不安を感じる場合は、登山ツアーや登山サークルに参加してみるのもおすすめです。同じ趣味を持つ仲間を見つけることで、より楽しく安心して登山ができるでしょう。最近では、初心者向けのガイド付きツアーや女性限定の登山サークルなど、選択肢が豊富にあります。

山を楽しむ方法は本当に人それぞれです。安全を第一に、自分のペースで、自分に合った登山スタイルを見つけて、山での時間を楽しんでください。

登山、トレッキング、ハイキング、その違いは?体力や経験に合わせた山歩きの楽しみ方
HIKESのSNSもチェックしよう!
>登山・山歩きに役立つウェアや道具が満載!

登山・山歩きに役立つウェアや道具が満載!

登山・山歩きに欠かせないウェアや道具を詳しく紹介しています。季節や天候に応じたウェアの選び方から、軽量で機能的な登山ギアまで、実際の使用経験に基づいた信頼性の高いアイテムを厳選してお届けします。

初心者から上級者まで、すべての山歩き愛好者に役立つ情報が満載です。

CTR IMG